福井県は、製造業や建設業を中心に中小企業・個人事業主が多い地域です。長年地域に根ざして事業を営んできた方でも、取引先の倒産や売上の減少がきっかけで、資金繰りが一気に厳しくなることがあります。
事業の借金が膨らむと、経営者個人としての借金問題も同時に発生します。事業用の融資に個人保証をつけていたり、生活費をカードローンで補っていたりと、事業と個人の借金が複雑に絡み合っているケースがほとんどです。
15年の弁護士経験のなかで、多くの経営者の方から「事業をたたむしかないが、どこから手をつけていいかわからない」というご相談をいただいてきました。この記事では、個人事業主や会社経営者が自己破産を検討する際に知っておくべきポイントを整理します。
個人事業主の自己破産 ― サラリーマンとの違い
個人事業主が自己破産を申し立てる場合、会社員の方とは手続きの進み方が異なることが多いです。
会社員の方であれば、財産が少なければ「同時廃止」といって、比較的簡単な手続きで終わることがあります。しかし、個人事業主の場合は、売掛金や事業用の在庫、機械設備などの財産があったり、取引関係の調査が必要だったりするため、裁判所が破産管財人を選任する「管財事件」になるのが通常です。
管財事件では、破産管財人が財産の調査・換価を行い、債権者への配当手続きを進めます。そのぶん手続き期間は長くなりますが、管財人が間に入ることで債権者との交渉もスムーズに進む面があります。
なお、管財事件になると、裁判所への予納金(福井地方裁判所では通常20万円程度)が別途必要になります。この費用についても、事前にしっかり準備しておくことが大切です。
会社代表者の連帯保証 ― 法人破産と個人破産の同時進行
会社(法人)を経営している方の場合、金融機関からの借入に代表者個人が連帯保証をしているケースがほとんどです。会社が事業を継続できなくなり法人破産を申し立てると、連帯保証債務が代表者個人に一括で請求されます。
たとえば、会社の借入が数千万円規模であれば、それがそのまま個人の借金になります。到底返済できる金額ではないため、法人破産と同時に代表者個人の自己破産も申し立てるのが一般的です。
実務上は、法人と個人の破産を同じタイミングで申し立て、同じ破産管財人が両方の手続きを担当することが多いです。これにより、法人と個人の財産関係を一体的に整理でき、手続き全体がスムーズに進みます。
事業をたたむときに知っておくべきこと
事業を停止するにあたっては、借金の整理だけでなく、いくつか重要なポイントがあります。
従業員への対応
従業員がいる場合、未払いの賃金や退職金が発生することがあります。会社に支払い能力がない場合でも、「未払賃金立替払制度」を利用できる可能性があります。これは、独立行政法人労働者健康安全機構が、一定の要件のもとで未払い賃金の一部を立替払いしてくれる制度です。従業員の生活を守るためにも、この制度の活用は必ず検討します。
取引先への対応
事業停止にあたっては、取引先への連絡や引継ぎも重要です。弁護士が代理人として受任通知を送付することで、債権者からの直接の連絡は弁護士に一本化されます。経営者の方が矢面に立つ負担を大きく減らすことができます。
事業用資産の扱い
事業で使っていた車両や設備などは、破産手続きのなかで管財人が換価します。ただし、生活に必要な最低限の財産は法律で保護されていますので、すべてを失うわけではありません。
破産後の生活と再出発
「破産したら人生が終わる」と思い込んでいる方が少なくありません。しかし、実務での実感として、破産後にしっかりと生活を立て直している方はたくさんいます。
自己破産の免責を受ければ、連帯保証を含むすべての借金の返済義務がなくなります。破産によって就ける仕事が制限されるのは手続き中の一時的なものであり、免責確定後は制限がなくなります。
また、破産したからといって二度と事業ができないわけでもありません。免責確定後は、再び事業を始めることも法律上可能です。実際に、福井でも破産後に別の形で再起された方のご相談を受けることがあります。
大切なのは、問題を先送りにしないことです。資金繰りが厳しくなった段階で早めにご相談いただければ、選択肢が多い状態で対策を考えることができます。
実際の解決例
建設業の個人事業主(50代男性・負債約1,500万円)
長年福井で建設業を営んでいましたが、工事代金の未回収が重なり、事業用借入と個人のカードローンを合わせて約1,500万円の負債を抱えていました。管財事件として自己破産を申し立て、事業用資産の整理を経て、免責許可を得ることができました。現在は別の会社に勤務しながら、安定した生活を送っています。
製造業の会社代表者(50代男性・連帯保証約5,000万円)
福井で製造業の会社を経営していましたが、主要取引先の業績悪化に伴い売上が激減。会社の借入に連帯保証をしていたため、法人破産と同時に個人の自己破産を申し立てました。約5,000万円の連帯保証債務が免責となり、現在は新たな仕事に就いて生活を再建しています。
まとめ
事業の借金問題は、個人の借金問題と表裏一体です。一人で抱え込むと状況は悪化する一方ですが、弁護士に相談することで、法人と個人の借金を一括して整理する道筋が見えてきます。
当事務所では、個人事業主の方、会社経営者の方の破産手続きについて、多くの実績があります。福井で事業の継続にお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。