「何年も前に借りた借金の督促が突然届いた」「ずっと返済していなかった借金を今さら請求された」――このようなご相談をいただくことがあります。実は、長期間返済していない借金には「消滅時効」が成立し、法的に返済義務がなくなる場合があります。
ただし、時効は自動的に成立するものではなく、正しい手続きを踏む必要があります。また、対応を誤ると時効が使えなくなるリスクもあります。15年にわたり債務整理に取り組んできた経験から、借金の消滅時効について解説します。
消滅時効の基本
消滅時効とは、一定期間、権利を行使しないまま放置した場合に、その権利が消滅する制度です。借金の場合、債権者が一定期間返済の請求をせず、債務者も返済をしなかった場合に、時効が完成する可能性があります。
時効期間は何年か
2020年4月の民法改正により、時効期間のルールが変わりました。
改正後(2020年4月1日以降に発生した債権)
権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年のいずれか早い方で時効が完成します。消費者金融やカードローンなど、貸金業者からの借金は通常5年で時効期間が満了します。
改正前(2020年3月31日以前に発生した債権)
商事債権(貸金業者からの借入れなど)は5年、個人間の貸し借りは10年が時効期間でした。改正前に発生した債権には、引き続き旧法が適用されます。
時効のカウント開始時期
時効期間のカウントは、最後に返済した日の翌日から始まります。一度も返済していなければ、返済期日の翌日が起算点です。
たとえば、最後の返済が2020年6月15日であれば、そこから5年後の2025年6月15日に時効期間が満了することになります。
時効の更新(中断)事由
時効期間が進行していても、一定の事由があると時効がリセットされます。これを「時効の更新」(旧法では「時効の中断」)といいます。以下の事由に注意が必要です。
1. 裁判上の請求
債権者が訴訟を提起したり、支払督促を申し立てたりすると、時効は更新されます。判決が確定した場合、そこから新たに10年の時効期間が始まります。
2. 債務の承認
債務者が借金の存在を認める行為をすると、時効は更新されます。具体的には、返済計画の相談をする、借金の一部を返済する、支払猶予を求める、債務承認書にサインするなどの行為が該当します。
特に注意すべきは、少額でも返済してしまうと時効が更新されるという点です。督促を受けて慌てて少額を振り込むと、せっかく進行していた時効がリセットされてしまいます。
3. 差押え・仮差押え
債権者が財産の差押えや仮差押えを行った場合も、時効は更新されます。
時効援用の方法
時効期間が満了しただけでは、自動的に借金がなくなるわけではありません。債務者が「時効を援用する」という意思表示を行う必要があります。
時効援用は、内容証明郵便で行うのが確実です。内容証明郵便であれば、いつ、どのような内容の通知を送ったかが証拠として残ります。
内容証明郵便には、債権者名、契約番号や借入日などの特定情報、消滅時効が完成していること、時効を援用する旨を記載します。
15年の経験から申し上げると、時効援用の通知は弁護士に依頼して作成することをお勧めします。記載内容に不備があると、時効援用が無効になったり、逆に債務の承認と受け取られたりするリスクがあるためです。
時効援用ができないケース
以下のような場合には、時効援用が使えません。
すでに裁判で判決が出ている場合
確定判決や仮執行宣言付支払督促が出ている場合、時効期間は判決確定時から10年に延長されます。古い借金でも、途中で裁判を起こされていれば、時効は完成していない可能性があります。
時効期間中に債務を承認してしまった場合
先述のとおり、一部返済や支払猶予の申入れなど、債務を認める行為をしていると時効は更新されています。
時効期間がまだ満了していない場合
最後の返済日や判決確定日からの経過年数を正確に計算する必要があります。自己判断で時効が成立していると思い込み、対応を誤るケースもあります。
時効が使えない場合の対処法
時効の援用ができない場合でも、借金問題の解決方法はあります。通常の債務整理(任意整理・個人再生・自己破産)を検討することになります。
特に、長期間延滞している借金は遅延損害金が膨らんでいることが多く、元本以上の金額になっているケースもあります。このような場合、任意整理で遅延損害金をカットする交渉が有効なことがあります。
また、古い取引であれば過払い金が発生している可能性もあります。利息制限法を超える金利で取引していた場合、逆に貸金業者からお金を取り戻せることもあります。
まとめ
長期間返済していない借金は、消滅時効の援用により返済義務がなくなる場合があります。ただし、時効が更新されていないかの確認、正しい方法での援用手続きなど、慎重な対応が必要です。
督促状が届いた場合に最もやってはいけないことは、慌てて返済したり、電話で支払いの相談をしたりすることです。まずは弁護士に相談し、時効が成立しているかどうかの判断を仰いでください。当事務所では初回無料でご相談をお受けしています。