大学や専門学校を卒業し、社会人として働き始めたものの、奨学金の返済が重くのしかかっている――そのような相談が近年増えています。日本学生支援機構(JASSO)の統計でも、奨学金の返還が3か月以上延滞している方は相当数に上ります。
奨学金の返済が苦しいからといって、すぐに自己破産しなければならないわけではありません。JASSOには返済を楽にする制度が用意されていますし、他の借金と合わせて整理する方法もあります。15年にわたり債務整理に取り組んできた経験から、奨学金の返済に困ったときの対処法を解説します。
奨学金の返済が苦しくなる原因
奨学金の返済が困難になる背景には、いくつかの共通するパターンがあります。卒業後に安定した就職ができなかったケース、就職はしたものの給与が想定より低かったケース、転職や失業により収入が減ったケースなどです。
また、奨学金以外にカードローンや消費者金融からの借入れが増え、返済総額が収入を圧迫しているケースも多く見られます。奨学金だけであれば何とかなっても、複数の借金が重なると返済が回らなくなるのです。
返済を滞納し続けると、延滞金が加算されるだけでなく、個人信用情報に事故情報が登録され、最終的には裁判を起こされて給与差押えに至る可能性もあります。早めの対処が非常に重要です。
JASSOの救済制度①:減額返還制度
減額返還制度は、毎月の返還額を2分の1または3分の1に減額できる制度です。返還期間は延びますが、返還予定総額は変わりません。経済的に苦しいが、少額であれば返済を続けられるという方に適した制度です。
利用できる条件としては、年収が一定額以下であること(給与所得者は年収325万円以下が目安)、延滞していないことなどがあります。適用期間は最長15年(1年ごとの更新)です。
注意点として、すでに延滞している場合は原則として利用できません。延滞が始まる前に申請することが大切です。
JASSOの救済制度②:返還期限猶予
返還期限猶予は、返還を一定期間先送りにできる制度です。猶予期間中は返還の必要がなく、延滞扱いにもなりません。猶予期間は通算で最長10年です。
失業中、傷病により就労困難、経済困難(年収300万円以下が目安)などの事由がある場合に申請できます。減額返還と同様、延滞が発生する前の申請が原則です。
これらの制度はJASSOに直接申請するものであり、弁護士に依頼する必要はありません。ただし、すでに延滞が生じている場合や、他の借金も抱えている場合には、弁護士に相談したうえで全体的な解決策を検討することをお勧めします。
奨学金と債務整理の関係
JASSOの救済制度で対応できない場合や、奨学金以外にも借金がある場合には、法的な債務整理を検討することになります。状況に応じた選択肢を整理します。
奨学金だけが返せない場合
奨学金以外に借金がなく、奨学金だけが返せない場合は、まずJASSOの減額返還・猶予制度を利用するのが最善です。債務整理は原則として必要ありません。
奨学金以外にも借金がある場合
任意整理では、整理する債務を選ぶことができます。カードローンや消費者金融の借金を任意整理で減額し、奨学金はそのまま返済を続ける(またはJASSOの制度を併用する)という方法が可能です。奨学金を任意整理から除外することで、保証人への影響を避けることができます。
全体的に返済が困難な場合
借金総額が大きく、全体的に返済が困難な場合は、自己破産や個人再生を検討します。これらの手続きでは、奨学金を含むすべての借金が対象になります。自己破産であれば返済義務がなくなり、個人再生であれば大幅に減額されます。
保証人・連帯保証人への影響
奨学金の債務整理を検討する際に最も気になるのが、保証人への影響です。ここは保証の種類によって大きく異なります。
機関保証の場合
保証機関が保証人になっている「機関保証」を利用している場合は、自己破産や個人再生をしても、家族や親族に請求が行くことはありません。保証料を支払って保証機関に保証を委託しているため、本人の債務整理は本人だけの問題で完結します。
人的保証の場合
親や親族が連帯保証人・保証人になっている「人的保証」の場合は注意が必要です。本人が自己破産や個人再生をすると、JASSOは保証人に対して残額を一括請求します。保証人が一括で支払えない場合、保証人自身も債務整理を検討する必要が出てきます。
15年の実務経験上、人的保証のケースでは、事前に保証人となっている家族に状況を説明し、対応策を一緒に考えることが重要です。保証人への影響を最小限にするための方法を、弁護士と相談しながら慎重に進めていくことが大切です。
まとめ
奨学金の返済が苦しい場合、まずはJASSOの減額返還・返還期限猶予の制度を確認してください。他の借金も重なっている場合は、任意整理で奨学金を除外する方法や、自己破産・個人再生で全体を整理する方法があります。
保証人への影響は保証の種類によって異なりますので、どの方法が最適かは個別の状況によります。当事務所では奨学金を含む借金問題の相談を初回無料でお受けしています。一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。